原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO

ステージいっぱいに並ぶ12人のメンバーたち、彼らが一丸となって繰り出すファンキーでダンサブルな音作り、司令塔・ブルーイのユーモラスなMCと卓越したギター・プレイが、こちらに限りない喜びを与えてくれます。「日常がだんだん戻ってきた」と、実感せずにはいられない瞬間です。

今年で結成43年を迎えるUKジャズ・ファンクの雄、インコグニートの3年ぶりとなる来日公演が始まりました。ジャイルス・ピーターソンとのユニット"ストラータ"やソロ活動でも多忙を極めているブルーイですが、それによってインコグニートの勢いが滞るということはありません。"I miss you, too!"と観客に呼び掛けて、始まったのは結成当初のナンバー「Parisienne Girl」。ブルーイがまだ20代前半だった頃に書いた楽曲が、すこぶる新鮮な響きを伴って現在に蘇ります。続いては、ブルーイにとってとても重要な年（ロンドンのハマースミス・オデオンでサンタナやアース・ウィンド＆ファイアーのライヴを見て衝撃を受けたそうです）であったという1975年へのオマージュ「1975」。ステージにはジョイ・ローズ、チェリー・V、来日公演初参加となるナタリー・ダンカンという3人のヴォーカリストが登場します。いずれもリード・ヴォーカルとコーラス・パートの双方に冴えをみせる抜群の実力者です。ナタリーの「Above The Night」、ジョイの「Talkin' Loud」、チェリーの「I Love What You Do For Me」等、華やかな熱唱が続きました。

花から花へと移りゆくハチドリの姿をテレビで見ているうちにメロディが浮かんだという「Colibri」を経て、インストゥルメンタル・パートへ。ここ数年の名物ともいえるフランチェスコ・メンドリア（ドラムス）やジョアン・カエタノ（パーカッション）との掛け合い、ホーン・セクションの息の合ったプレイが耳を奪います。トランペットのジョー・モッターは急遽参加したとのことですが（サウンド・チェックの時に他のメンバーと初めて会ったそうです）、見事アンサンブルに溶け込むばかりか、澄み切った高音をたっぷり響かせて大きな拍手を受けていました。

ステージ後半でのブルーイは、パンデミックの話題にも触れながら、"それでも太陽は昇り、新しい日はやってくる"と観客に呼びかけます。そして「I See The Sun」、スティーヴィー・ワンダーの定番（であり、インコグニートの代表曲でもあるといっていいでしょう）「Don't You Worry 'Bout A Thing」、さらに「Morning Sun」の三連発で、オーディエンスの熱狂を極限まで高めました。

インコグニートのブルーノート東京公演は本日までですが、明日10日にはブルーノート東京オールスター・ジャズ・オーケストラとブルーイの共演が実現（11日には、この強力タッグで高崎市の「高崎芸術劇場 大劇場」にも登場します）。さらにインコグニートはその後12日・13日と丸の内コットンクラブ、14日に恵比寿ザ・ガーデンホールで行われる"L'ULTIMO BACIO Anno 22"に出演予定です。ポジティヴ・オーラ全開のライヴ・パフォーマンスを、ぜひお楽しみください！
(原田 2022 12.9)

Photo by Yuka Yamaji

ーーーーーーー
【LIVE INFO】

〈INCOGNITO〉
12.12 mon., 12.13 tue. 【東京 丸の内】 コットンクラブ

12.14 wed. 【東京 恵比寿】 ザ・ガーデンホール "L'ULTIMO BACIO Anno 22"

〈BLUE NOTE TOKYO ALL-STAR JAZZ ORCHESTRA plays Music of INCOGNITO with special guest JEAN-PAUL 'BLUEY' MAUNICK〉
12.10 sat. 【東京 南青山】 ブルーノート東京

12.11 sun. 【群馬 高崎】 高崎芸術劇場 大劇場