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RICHARD BONA ASANTE TRIO

artist RICHARD BONA

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原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO

 ベースとヴォーカルの両方でさらなる充実を極めるカメルーン出身のリチャード・ボナが、新ユニット"アサンテ・トリオ"を率いて来日中です。23日に高崎芸術劇場 スタジオシアターで初日公演を行い、そのテンションを保ったまま昨日から「ブルーノート東京」に登場、1曲目の1音目からファンをひきつけています。ボナがバンド・リーダーとして日本を訪れるのは、約4年半ぶりだそうです。

 共演メンバーのオスマニー・パレデス(アコースティック・ピアノ)とヒラリオ・ベル(ドラムス、パーカッション)は、いずれもキューバ出身のミュージシャンです。ボナの別ユニット"マンデカン・クバーノ"の一員でもあるオスマニーはタッチの美しさはもちろんのこと、鮮やかなジャズ・インプロヴィゼーション、切れ味鋭いモントゥーノ(トゥンバオ)を持ち合わせた名手。ヒラリオはボンゴやカウベルなどを導入した独自のドラム・セットを用いて、驚くほどメリハリに富んだサウンドを創り出します。

 管楽器やギター入りのバンドを組むことが多かったボナにとって、ピアノ・トリオ編成は一種の新境地といっていいでしょう。今回、このユニットのライヴに接して思ったのは、これまで以上にベースの音色が際立っていることです。親指を弦にやさしく押し当てることで生み出されるスタッカート的な発音、人差し指や中指で奏でられる重厚なロング・トーン、その間に挟み込まれる打楽器的な経過音などなど、表情豊かなベース・プレイが、オスマニーのアコースティック・ピアノに絡んでゆくところには、こたえられないスリルがありました。しかもボナは、こうしたクリエイティヴなベース演奏をするのと同時に、絹のように滑らかな歌声を、ほぼ全曲にわたって聴かせてくれるのです。

 敬愛するジャコ・パストリアスのナンバーからは、今回「Three Views of a Secret」を演奏。あの美しいメロディが、ボナのスキャットによって表現されてゆきます。"この曲が何拍子なのかカウントしないで"という前置きの後に演奏されたマイルス・デイヴィスの「All Blues」は、つんのめるような変拍子にアレンジされ、いっぽう「Manyaka o Brazil」ではアサンテ・トリオ流サンバと呼びたくなるような爽やかな音作りを展開。ルーパーを用いた"ひとりヴォーカル・アンサンブル"的なソロ・コーナーはさらに進化し、定番の「O Sen Sen Sen」ではボナとオーディエンスによるコール&レスポンスも行なわれました。その楽し気なやりとりは、日常が戻りつつあることを、強く感じさせてくれます。

 各メンバーが大変な超絶技巧の持ち主でありながら、それを上回る、溢れんばかりの歌心を持って"アサンテ・トリオ"の音楽を表現しているところに、私は強く惹かれました。息の合ったバンド・アンサンブルとは何か、それを目の前で示してくれる彼らの公演は27日まで続きます。

(原田 2023 4.26)

Photo by Jun Ishibashi

⚫︎来日公演は4月27日(木)まで
RICHARD BONA ASANTE TRIO
2023 4.25 tue., 4.26 wed., 4.27 thu.
詳細はこちら

SET LIST

2023 4.25 tue.
1st & 2nd
1. Bilongo
2. Three views of secret
3. Muntula Moto
4. All blues 11
5. Mut'Esukudu
6. SOLO
7. Janjo la Maya
8. Manyaka o Brazil
9. O sen sen sen
EC. Alfonsina y el Mar

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