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ANDREA MOTIS "Loopholes"

artist ANDREA MOTIS

REPORT

原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO

 もうこれは、"新生"アンドレア・モティスと呼んでいいでしょう。ヨーロッパ・ジャズ界屈指のヒロインが4年ぶりに来日し、これまでとは一線を画するステージで超満員のオーディエンスを沸かせています。

以前の公演ではジャズのスタンダード・ナンバーやブラジル音楽をセットリストに加えたアコースティックなサウンド作りで楽しませてくれたものですが、今回はエレクトリック・サウンドを大きく導入した最新傑作アルバム『ループホールズ』の世界を、そのままライヴ・ステージに持ち込んでいます。とはいえ、彼女の大きな魅力である暖かな歌声やトランペットの響きは、変わらず満喫できます。ただそこに、これまでの路線からは想像できないほどタイトなビートや重厚なベース・ラインが融合し、猛烈なスリルを生み出していくのです。アンドレアは2本のヴォーカル・マイク(1本にはエフェクトがかかっています)を使い分け、彼女の横では夫のクリストフ・マリンジャーがギター、マンドリン、ヴァイオリン、コーラスでキメ細かな彩りを添えます。作り込まれた『ループホールズ』の楽曲が、目の前で解凍され、そこにライヴならではのエキサイトメントが付け加えられていく様子は、まさしく快感です。

トランペットのイントロからシティ・ポップ的な曲調に移り変わる「I Had To Write A Song For You」(私にとってはアルバム最高のトラックのひとつです)も、ライヴではよりワイルドに展開していきます。イントロはいささか長くなり、アルバム・ヴァージョンよりもアンドレアの持つモダン・ジャズ奏者としての一面もしっかり現れるのですが、その部分が伝統的なジャズを感じさせれば感じさせるほど、ポップな歌メロとの対比が際立ちます。カヴァー曲ではレゲエの神格、ボブ・マーリーの「Is This Love」がとりあげられましたが、ステファン・コンダートのベースとミゲル・アセンシオのドラムスが紡ぎ出す浮遊するようなリズム・パターンに、語りかけるようなアンドレアの歌声が乗ると、まったく新しい、クールな世界が広がっていきます。「こういう解釈もあるのか」と嬉しくなっていたら、そこからごく自然に『ループホールズ』からの「Heat」に流れていくではありませんか。このパートでは、メンバーの誰もがジャム・セッション的なノリを楽しんでいたようです。クリストフのヴァイオリンとアレシオ・スミスのキーボードが延々と掛け合いを演じ、やがてユニゾンでメイシオ・パーカーの古典的ファンク・ナンバー「Southwick」を(数小節ですが)挿入するあたり、心憎いほどの絶妙な呼吸を感じさせてくれました。

さらに初日のセカンド・セットでは、「Adeu」と「Summertime」に井上銘が特別参加。5月12日にBLUE NOTE PLACEで開催されたコラボ・シリーズ"May Flower House"にアンドレアがゲスト参加したことへの返礼といったところでしょうか。指弾きとピック弾きを使い分けながらのニュアンスに富んだギター・プレイが、バンド・サウンドにさらなる厚みを付け加えて、オーディエンスから一層の熱狂を引き出しました。公演は15日まで続きます。アンドレアのさらなる進化と発展を、ぜひ至近距離でお楽しみください!

(原田 2023 5.14)

Photo by Yuka Yamaji

⚫︎来日公演は5月15日(月)まで
ANDREA MOTIS "Loopholes"
2023 5.13 sat., 5.14 sun., 5.15 mon.
詳細はこちら

SET LIST

2023 5.13 sat.
1st
1. Espera
2. Dexa't Anar
3. Babies
4. Jungla
5. I Had To Write a Song
6. Is This Love / Heat
7. Calima
8. Loopholes
9. El Pascador
EC. Locked in
 
2nd
1. Espera
2. Deixa't Anar
3. Babies
4. I Had Yo Wright a Song
5. Jungla
6. Espera
7. Is This Love / Heat
8. Calima
9. Adeu
EC. Summertime

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