原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO

衝撃のファースト・アルバム『WOW』から30年。ソロ、トリオ、カルテット、セクステット、オーケストラ等、さまざまなフォーマットで精力的な活動を続ける大西順子が、新たなトリオによる公演を昨日から「ブルーノート東京」で開催しています。

ドラマーは、大西順子がニューヨークに在住していた頃から、数えきれないほど一緒に共演を重ねてきたグレッグ・ハッチンソン。かつてセカンド・アルバム『クルージン』の発売記念コンサートで、病のため来日不能になったビリー・ヒギンズに替わって、おそろしくタイトでスムーズなプレイを繰り広げていた若手奏者が、歳月を経たいま、成熟と貫禄を身に着けて、ますます大西と絶妙な相性を示しているのは嬉しいことです。スティック～ブラッシュ～マレットを用いて紡ぎだされる美しい音色は際立つばかり、タムの縁も用いながら演奏にアクセントをつけていくあたりも、大きな聴きどころといえましょう。そしてベーシストには、今回が大西のユニットに初参加となるジョー・サンダースが選ばれました。これまでシオ・クローカー、クリスチャン・スコット、ジェラルド・クレイトン、ケンドリック・スコットらに重用されてきた現代ジャズ・シーンのファースト・コールです。堅実なサポート、メロディアスなソロ、数多く登場する大西のピアノとのユニゾン部分で特に輝くイントネーションの良さは、改めて彼の才能を知らしめてくれます。

編成によって演奏曲が大きく変わる大西順子ですが、今回はトリオ編成ということもあり、歴代のトリオ・アルバムに収められていたナンバーが次々と取り上げられました。『Glamorous Life』からハサーン・イブン・アリ作曲の「Almost Like Me」、『Junko Onishi Presents Jatroit Live At Blue Note Tokyo』でも圧巻の一曲だった組曲調の「The Three Penny Opera」（大西の師のひとり、ジャッキー・バイアードへのトリビュート）、『楽興の時』に入っていた「Back In the Days」等、入魂の楽曲が、このニュー・トリオによってオーディエンスの前に差し出されていきます。生き生きしたアドリブ・パートと緻密なアンサンブルが一体となって、ドラマティックなトリオ・ミュージックが展開されていくのです。オーディエンスは白熱の演奏に猛烈な拍手で応えると共に、スロー・バラードでは一音一音の余韻を噛みしめるかのように静かに聴き入ります。演奏者と聴き手、双方の真摯さが強く印象に残る、実に気持ちのいいステージでした。

大西順子、ジョー・サンダース、グレッグ・ハッチンソンの公演は10日まで続きます。3人が創造する音楽がいかに発展し、さらなる高みに達するのか......どのセットも、必見必聴となりそうです。

(原田 2023 6.9)

Photo by Makoto Ebi

●6.10 sat. 2ndショウの生配信が追加決定！
大西順子トリオ with グレッグ・ハッチンソン & ジョー・サンダース
2023 6.8 thu., 6.9 fri., 6.10 sat.