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EMMET COHEN TRIO

artist EMMET COHEN

REPORT

原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO

超満員の場内に、ヤング・ライオンズ3名の熱演が響きわたります。

エメット・コーエン・トリオの来日公演が昨日から始まりました。クリスチャン・マクブライドのバンド"ティップ・シティ"で脚光を浴び、近作リーダー・アルバム『Future Stride』『Uptown In Orbit』も大評判のエメットですが(初リーダー作は2011年の『In The Element』)、自身のユニットでの来日は今回が初めて。ジョシュア・レッドマンやデヴィッド・サンボーンとの共演歴があるベーシストのフィリップ・ノリス、ジョン・バティステ、ウィントン・マルサリス等との共演歴があるドラマーのカイル・プールと共に、ドライヴ感に次ぐドライヴ感で圧倒してくれました。

ステージはスタンダード・ナンバーの「Without A Song」から始まりました。「このピアノとベースの合わせ方、どこかで聴いたことがあるな」と思っていたところ、演奏後に登場したエメットのMCで種明かしがされました。シダー・ウォルトンが1974年に東京で録音したライヴ・アルバム『Pit Inn』の同曲を基に、再解釈したのだそうです。続いて飛び出したのは、これまた古典的なナンバー「La Rosita」。ジャズ・サックスの開祖のひとりであるコールマン・ホーキンスの愛奏曲でもありましたが、エメットは途中、ミシェル・ルグランの「Watch What Happens」をたっぷり引用しながら、楽想をどんどん拡大していきます。

師匠シェリー・バーグゆずりの粒の揃った音色で、ストライド奏法や内部奏法(ピアノの弦をハープのようにひっかく)も交えつつジャズ楽器としてのあらゆるピアノの機能を引き出すかのようにプレイするエメット、飛ぶようなアップ・テンポの箇所でもグリッサンドや開放弦を用いることなく正確無比なウォーキング・ベースを刻むフィリップ、そしてスティック、マレット、ワイヤー・ブラッシュ(ハンドル部分も含めて)を使うほかに両手で鼓面を叩くアプローチも行うカイル。かつてキャノンボール・アダレイも演奏した「If This Isn't Love」や、オスカー・ピーターソンやビル・エヴァンスがレコーディングしたこともある「People」といった長い歴史を持つ楽曲にも一筋縄ではいかないアレンジが施されています。トリオが生み出す猛烈なダイナミクス(メリハリ)には、聴き惚れる状態を通り越して、口をあんぐりさせられるばかりです。

110回以上も続いている配信番組「Live from Emmet's Place」も抜群に楽しいですが、至近距離でエメットのリーダー・ユニットを味わえるのは、また格別です。ジャズの面白さ、豊かさ、奥深さを全身全霊で表現する3人のプレイは、爽快そのもの。本日、そして明日の公演でも、アコースティック・ジャズの快感を、心ゆくまで届けてくれることでしょう。
(原田 2023 11.28)

Photo by Tsuneo Koga


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【LIVE INFORMATION】

EMMET COHEN TRIO
2023 11.27 mon., 11.28 tue., 11.29 wed. ブルーノート東京


エメット・コーエン(ピアノ)
フィリップ・ノリス(ベース)
カイル・プール(ドラムス)
パトリック・バートリー(サックス)※11.28のみ出演

詳細はこちら

SET LIST

2023 11.27 Mon.
1st
1. WITHOUT A SONG
2. LA ROSITA
3. IF THIS ISN'T LOVE
4. I’LL KEEP LOVING YOU
5. SPILLIN’ THE TEA
6. PEOPLE
7. HINE MA TOV
8. BREMOND’S BLUES
EC. CAROLINA SHOUT
 
2nd
1. TIME ON MY HANDS
2. THIS GUY’S IN LOVE WITH YOU
3. TOAST TO LO
4. POINCIANA
5. CLOSE YOUR EYES
6. SOMEWHERE OVER THE RAINBOW
7. ROUND MIDNIGHT
8. CHEROKEE
EC. SATIN DOLL

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