原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO

誰もが笑顔になること間違いなし、とっておきのジプシー・フィエスタが4年ぶりに行なわれています。ジプシー・キングス黄金期の音楽的ブレイン、チコ・ブーチキー率いる"チコ＆ザ・ジプシーズ"の来日ステージです。

ステージにはまずピーウィー（ヴァイオリン）、フランソワ・サンティアゴ（キーボード）、レオ・シャザレ（ベース）の3人が登場。彼らが位置につくと同時に、盛大な拍手を浴びて6人のギタリストが現れます。リーダーのチコは白いシャツでキメており、ほかのメンバーは黒を基調とした着こなしです。インストゥルメンタル曲「Alegria」でギター合奏の魅力をたっぷり届け（6人の役割分担が見事です）、あとは次々とヴォーカル・ナンバーが続きます。今回の公演はドラムレス編成なのですが、プログラミングと歯切れ良いギター・カッティングがその不在を補って余りある歯切れよさを生みます。

優れたヴォーカリストが何人も在籍しているのも、ジプシーズの魅力です。骨太な嗄れ声の持ち主であるムニンは、時にダンスも交えながらオーディエンスを熱狂させ、バラードの得意なカッサカは声量豊かな歌いっぷりで魅了、いっぽうホセはひたすら滑らかに歌い上げます。リード・ギタリストのロセンド・ゴメスは愛用の白い楽器から、矢継ぎ早に超絶フレーズを発します。右手の人差し指と中指を多用した弾き方はまるでベーシストのようであり、エル・ティティやケマといった前任者とは一線を画すフレージングを持っています。ロセンドをフィーチャーした「Inspiration」では、椅子に座ってプレイする彼の周りを他のギタリストが囲むようにプレイする演出をとって、客席からさらなる拍手と歓声を呼び起こしました。

今回の来日公演で個人的に楽しみにしていたことのひとつに、スティングやピーター・ゲイブリエルとも共演経験のある、アルメニアの血を引くドゥドゥク奏者レヴォン・ミナッシアンのゲスト参加があります。私はいままでドゥドゥクの生演奏を聴いたことがなく、ジプシーズの最新アルバム『Otro Camino』で実現したレヴォンとの共演が、ライヴでどう開花するのか関心が高まるばかりでした。ドゥドゥクは音量が控えめな吹奏楽器なので、チコたちのサポートも自然と抑え気味のものになります。哀感のこもった、すすり泣くようなドゥドゥクの音色と、アコースティック・ギターの絡みは絶品でした。

じっくりと抒情的な世界を届けた後は、熱狂に次ぐ熱狂です。「Djobi Djoba」、「Bamboleo」、「Volare」と定番が次々とプレイされました。このジプシー・フィエスタは最高潮のまま12月4日までブルーノート東京で行われ、5日と6日に開催される恵比寿・BLUE NOTE PLACEの1周年記念ライヴ「BLUE NOTE PLACE 1st Anniversary Celebration with CHICO & THE GYPSIES」へと続きます。
(原田 2023 12.3)

Photo by Makoto Ebi

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【LIVE INFORMATION】

CHICO & THE GYPSIES
2023 12.2 sat., 12.3 sun., 12.4 mon.　ブルーノート東京

BLUE NOTE PLACE 1st Anniversary Celebration with CHICO & THE GYPSIES
2023 12.5 tue., 12.6 wed.　BLUE NOTE PLACE