原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO

ブルーノート東京オールスター・ジャズ・オーケストラdirected by エリック・ミヤシロの2デイズ公演が昨日から始まりました。スペシャル・ゲストは、来る6月に80歳の誕生日を迎えるピアニストのモンティ・アレキサンダー。モンティは本日もオーケストラと共演し、5月1日と2日には自身のトリオによる公演を開催します。

オールスター・ジャズ・オーケストラは昨年、結成10周年を迎えました。が、彼らは留まることなく、前進し、変化していきます。本日はいきなり、ファンク・バンドのVulfpeckでも活動する"世界で最も熱い注目を集めるギタリストのひとり"、コリー・ウォンのナンバー「Assassin」から幕開けです。彼の曲ではほかにも「St. Paul」がプレイされ、さらにチック・コリア・エレクトリック・バンドの人気ナンバーである「Got A Match」なども取りあげられました。ビッグバンドで演奏されそうにない曲を、あえてビッグバンド・アレンジにしてオーディエンスに届けたいという、音楽監督エリック・ミヤシロの探求心とエンターテインメント精神が強く伝わるステージです。もちろん本田雅人（アルト・サックス）、小池修（テナー・サックス）、中川英二郎（トロンボーン）らソリストも快演を繰り広げました。曲によって登場する、リズム隊が休み、管楽器だけでアンサンブルを繰り広げるパートも、すっかりオーケストラの大きな魅力のひとつとして定着した印象を受けました。

パット・メセニーを筆頭に、本当に数多くのミュージシャンとの共演歴を持つオールスター・ジャズ・オーケストラですが、私には、今回のモンティ・アレキサンダーとのセッションが歴代で最も意外でした。というのも、約60年のキャリアを通じてモンティが残してきたアルバムのおそらく99％が小編成だからです。管楽器が1本でも入っている作品すら珍しいと思います。それに、モンティは譜面を読まずに演奏活動を繰り広げてきた音楽家です。が、「予想できないこと」を体験するのは楽しいものです。モンティとオーケストラは、双方が持つ華やかさとエンターテインメント性が見事に一体化させて、じつに味わい深い世界へと案内してくれました。モンティが書いたバラード「Love Notes」における、流れるようなピアノ・タッチとフルート5本の一体感は殊に美しく、いっぽう、カリプソ「Sly Mongoose」におけるモンティは歌、鍵盤ハーモニカ、ピアノのすべてで観客を熱狂させました。アンコールは、モンティと同じくジャマイカに生まれた（年齢は1歳下）不滅のレゲエ・ヒーロー、ボブ・マーリーの楽曲から「No Woman, No Cry」と「I Shot The Sheriff」のメドレー。バンドスタンドにいる誰もが演奏を楽しみ、その楽しさが観客に伝わって、超満員の場内はさらに盛り上がりました。

本日30日はユネスコの制定した「国際ジャズ・デイ」です。それを記念してセカンド・ショウの無料生配信が決定しています。そして、先に触れたとおり、5月1日と2日にはモンティ・アレキサンダー・トリオによるステージが開催されます。どのプログラムも必見といえましょう。
(原田 2024 4.30)

Photo by Jun Ishibashi

―――――
【LIVE INFORMATION】

Celebrate "International Jazz Day" with
ブルーノート東京オールスター・ジャズ・オーケストラ
directed by エリック・ミヤシロ
with special guest モンティ・アレキサンダー
2024 4.29 mon., 4.30 tue.　ブルーノート東京

※4.30 tue. 2ndショウ (Start8:30pm)を無料生配信！(アーカイブ配信視聴期間：5.3 fri. 11:59pmまで)

モンティ・アレキサンダー
"The 80th Birthday Nights' Celebration"
2024 5.1 wed., 5.2 thu.　ブルーノート東京