2024 7.9 tue., 7.10 wed., 7.11 thu.
DIANE BIRCH
artist DIANE BIRCH
原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO
豊かな声量、緩急に富むピアノ・プレイ、親しみやすいメロディ・ライン、観客一体型というべきエンタテインメント性たっぷりのステージ。会場に足を運んだ誰もが「ここに来てよかった」と思うに違いありません。才気あふれるシンガー・ソングライターのダイアン・バーチが、最新アルバム『フライング・オン・エイブラハム』(個人的には、元ウェイン・ショーター・バンドのジェイソン・リベロの参加にも惹かれました)を携えて、遂にブルーノート東京初登場です。
「ひょっとしたら私よりも有名かもしれません」と彼女自身が語るバンドメンバーの面々も、実に強力です。ギターのポール・ステイシーとドラムスのジェレミー・ステイシーは双子の兄弟で、共にザ・レモン・トゥリーズ、ノエル・ギャラガーズ・ハイ・フライング・バーズ等のバンドで活動。ポールはノエルから"信じられないほど素晴らしい耳の持ち主であり、卓越したギタリストである"との称賛を受け、ハイ・フライング・バーズはもちろんのこと、オアシスの楽曲にも演奏やエンジニアリングで貢献しています。ジェレミーはライアン・アダムス等のバンドでも演奏し、エリック・クラプトンのアルバム『クラプトン』でも演奏。キング・クリムゾンのツアーでドラムスとキーボードを兼任していたこともあります。ベースのニック・ピニはこれまでプッピーニ・シスターズ、ギルバート・オサリヴァン等と共演、ジョーダン・ラカイの最新作『ザ・ループ』にも加わっていました。アコースティック・ベースの名手でもありますが、この日は4弦のエレクトリック・ベースで、渋い輝きを放っていました。
ステージには下手側からポール、ダイアン、ジェレミー、ニックの順で並び、ピアノは鍵盤側が上手側に向いた形で設置されます(つまりダイアンは客席に左半身を向ける形です)。『フライング・オン・エイブラハム』のプロデュースを務めたポールをはじめとする百戦錬磨のミュージシャンをバックに歌うダイアンは、本当に生き生きとしています。「こんなに心地よいバックグラウンドを提供されたら、歌っていて天にも昇る気持ちだろうな」と想像せずにはいられない、音楽する喜びをふりまくようなステージを味わわせてくれたのです。曲のほとんどはダイアンの和音によるピアノのイントロから始まり、そこに他のミュージシャンが合流するアレンジでした。つまり曲のテンポや、ムードの設定は完全に彼女がイニシアティヴを握っているのです。最新作からの「Wind Machine」、「Moto Moon」、「Jukebox Johnny」などが次々と目の前で届けられ、特に「Jukebox~」に関しては、ダンサブルなリズムと凝りに凝ったコード展開の対比がライヴで一層強まっていたように感じられました。
ほか、ダイアンの名を一躍広めた2009年作品『Bible Belt』からの「Nothing But A Miracle」、ギル・スコット=ヘロンがビリー・ホリデイとジョン・コルトレーンに捧げた(このふたりは共に7月17日が命日です)楽曲「Lady Day and John Coltrane」のカヴァー等も鮮やかに披露。鳴りやまぬ拍手に応えて、最後はソロの弾き語りによる「Kings of Queen」を聴かせてくれました。フジロック登場から10数年を経て、充実の一途にあるダイアン・バーチのブルーノート東京公演は、明日11日まで行われます。
(原田 2024 7.9)
Photo by Tsuneo Koga
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【LIVE INFORMATION】
2024 7.9 TUE.
1st | |
---|---|
1. | Wind Machine |
2. | Moto Moon |
3. | Ariel |
4. | Shade |
5. | Jukebox Johnny |
6. | Critics Lullaby |
7. | Boys On Canvas |
8. | Russian Doll |
9. | Juno |
10. | Lady Day and John Coltrane |
11. | Noting But A Miracle |
EC. | Kings of Queens |
2nd | |
1. | Wind Machine |
2. | Moto Moon |
3. | Ariel |
4. | Shade |
5. | Jukebox Johnny |
6. | Critics Lullaby |
7. | Boys On Canvas |
8. | Russian Doll |
9. | Juno |
10. | Lady Day and John Coltrane |
11. | Noting But A Miracle |
EC. | Valentino |