2024 7.14 sun., 7.15 mon., 7.16 tue.
SIMON PHILLIPS "Protocol V"
artist SIMON PHILLIPS
原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO
音の勇者たちによる、白熱のプレイが今年も繰り広げられています。百戦錬磨のカリスマ・ドラマー、サイモン・フィリップスが大いなる誇りと自信をもって率いるユニット"プロトコルV"の来日公演です。共演メンバーはオトマロ・ルイーズ(キーボード)、アーネスト・ティブズ(ベース)、ジェイコブ・セスニー(サックス)、アレックス・シル(ギター)。2019年のステージから続く不動の顔ぶれで、文字通り阿吽の呼吸によるプレイの数々で楽しませてくれます。
初日ファースト・セットの前半では、「Nimbus」、「Solitaire」、「Passage To Agra」と、2017年作品『プロトコル4』からの楽曲が続けて繰り広げられました。そのアルバムでの共演メンバーはアーネスト、グレッグ・ハウ、デニス・ハムでしたが、もちろん今回は現在の楽器編成用にリアレンジされています。ジェイコブはアルト、ソプラノ、テナーの各サックスを持ち替えて彩り豊かな吹奏を行ない(「Solitaire」では、1960~70年代の、たとえばエディ・ハリスやラスティ・ブライアントが出していたような"電気サックス"風のトーン、そこにギターのチョーキングのような音使いを加えてテナーを吹きまくりました)、アレックスの指使いはネックの上を舞うようです。サイモンは、時にアーネストのとんでもなく重厚なベース・プレイと歩調を合わせるように、時にソリストに俊敏に反応しながら、切れの良い打音を打ち込みます。
数曲演奏し終わると、サイモンは巨大なドラム・セットの横をスルリと通り抜けて、観客の前に現れてMCを始めます。日本語を織り交ぜたMCからは、彼がこの国のリスナーをいかに愛し、ここで演奏することに喜びを感じているかを遺憾なく伝えるものでした。
2013年、アンディ・ティモンズ在籍の頃にリリースされた『プロトコルII』収録曲「Moments of Fortune」を抑え気味のテンポでじっくりと聴かせた後、アレックスがルーパーを使ったアコースティック・ギター・プレイを披露。そこから、目下の最新作『プロトコルV』の目玉というべきトラック「The Long Road Home」へと移行します。アルバムでもライヴでも、聴くごとに"次はどう展開していくんだろう?"とワクワクさせられる大作ですが、この日も雄大なメロディ、カッチリしたキメ、伸び伸びしたソロ・パートが見事にかみ合いながら、"この日ならではの「The Long Road Home」"を生み出していました。2台の楽器を瞬時に持ち替えてサウンドに変化を加えるアレックスとジェイコブはもちろんのこと、オトマロの無伴奏キーボード・ソロの箇所にも私は惹かれました。左手による強靭なオスティナート(一定パターンの繰り返し)、右手によるクラシカルなフレーズは、美しいの一言に尽きます。
この曲を演奏し終えると、メンバー全員がステージ前方に並びます。が、拍手と歓声は高まるばかり。サイモンはすぐさまドラム・セットに戻って圧倒的なソロを始め、そこからメンバー全員で人気曲「Celtic Run」に取り掛かります。迫力と楽しさがハイレベルで共存する、ぜひともリピートしたいライヴがここにありました。音楽の喜びにあふれるサイモン・フィリップス"プロトコルV"公演は16日まで続きます。
(原田 2024 7.15)
Photo by Great The Kabukicho
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【LIVE INFORMATION】
SIMON PHILLIPS "Protocol V"
2024 7.14 sun., 7.15 mon., 7.16 tue. ブルーノート東京
2024 7.14 SUN.
1st | |
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1. | Nimbus |
2. | Solitaire |
3. | Passage To Agra |
4. | Undeviginti |
5. | Moments Of Fortune |
6. | The Long Road Home |
EC. | Celtic Run |
2nd | |
1. | Jagannath |
2. | When the Cat’s Away |
3. | Pentangle |
4. | Nyanga |
5. | Narmada |
6. | The Long Road Home |
EC. | Manganese |