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HIROMI / Hiromi's Sonicwonder

artist 上原ひろみ

REPORT

原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO

上原ひろみ率いる"Hiromi's Sonicwonder"が7月28日から8月3日にかけて7デイズ14セットの公演を行い、リスナーを興奮の渦に巻き込みました。昨年の11月から12月にかけて日本でのホール・ツアーも大成功させた同プロジェクトですが、ブルーノート東京への登場は今回が初めて。ステージではアルバム『Sonicwonderland』からのナンバーはもちろんのこと、聴きごたえたっぷりの新曲も披露され、進化と拡張を続ける"Hiromi's Sonicwonder"の世界を満喫することができました。

メンバーはもちろんアダム・オファリル(トランペット)、アドリアン・フェロー(ベース)、ジーン・コイ(ドラムス)、そして上原ひろみ(ピアノ、キーボード)。上原いわく、"ゆかいな仲間たち"なのだそうです。初日のファースト・セットは、『Sonicwonderland』のオープニング曲でもある「Wanted」から始まりました。"Hiromi's Sonicwonder"の結成は、上原がアドリアンのプレイに感銘を受けたところから始まっています。ピアノ→ベース→ドラムス→トランペットと、楽器の音が順番に重なっていくところは、そのままユニットの成立過程を表しています。そこから間髪を入れず、キーボードのギラギラした低音が鳴り響く「Sonicwonderland」へ。ソリストの即興パート、およびそれを煽るリズム・セクションは、当然ながらアルバムより数段アグレッシヴです。一糸乱れぬアンサンブル、各メンバー間の信頼が伝わるアイコンタクト、演奏するのが楽しくてたまらないといった感じの4人の表情から、いかにこのプロジェクトが抜群のチームワークを持っているかが伝わってきます。

アルバムからの楽曲が続いた後、今回のブルーノート東京公演で 日本初公開となる書きおろしナンバーが演奏されました。といっても、単なる新曲ではありません。タイトルは「SUITE "OUT THERE"」、つまり組曲です。内容は「Takin'Off」、 「Strollin'」、「Orion」、「The Quest」の四部構成。どれもが異なる趣を持ち、しかもキャッチーです。アダムのトランペットは生の音とエフェクトを通した音を巧みに切り替え、さらにハーマン・ミュートとプランジャー・ミュートを使い分けます。私が特に驚いたのはプランジャーの採用です。お椀のような形をしたミュートで、かつてデューク・エリントン楽団のブラス奏者が得意としていた------といっても、それは半世紀も前のことです。その、ある意味歴史的な音色が、アドリアンやジーンの醸し出すウネリと絡み合って、俄然新鮮なものとして響いてきたのは大きな驚きでした。そして上原ひろみのプレイも、2台のキーボード、1代のアコースティック・ピアノから縦横無尽に音を引き出し、時には伝説のピアニスト、エロール・ガーナーばりの"ブロック・コードを用いたストライド・ピアノ的なプレイ"でサウンドに彩りを加えます。前進意欲と歴史への敬意がひとつになって、2024年の夏の夜に鳴り響く情景は、考えれば考えるほどロマンティックです。

鳴りやまない拍手に応えてラストにプレイされたのは、『Sonicwonderland』からの「Bonus Stages」。ゲーム音楽とブラスバンドの音楽が出会ったような軽快な曲調を4人は快演し、超満員の場内からさらなる手拍子と笑顔を引き出しました。"ゆかいな仲間たち"の次回のブルーノート東京公演が、早くも楽しみになってきます。
(原田 2024 8.4)

Photo by Tsuneo Koga

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【LIVE INFORMATION】

HIROMI
Hiromi's Sonicwonder
2024 7.28 sun., 7.29 mon., 7.30 tue., 7.31 wed., 8.1 thu., 8.2 fri., 8.3 sat. ブルーノート東京
詳細はこちら

SET LIST

2024 7.28 SUN.
1st
1. Wanted
2. Sonicwonderland
3. Suite “Out There”
EC. Bonus Stage
 
2nd
1. XYZ
2. Utopia
3. Yes!Ramen!!
4. Trial and Error
5. Up
EC. Balloon Pop

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