LIVE REPORTS

ARTIST ARCHIVES

MONTHLY ARCHIVE

VIDEO ARCHIVES


MARCUS MILLER

artist MARCUS MILLER

REPORT

原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO

2018~19年のカウントダウン&ニュー・イヤー公演から、はや5年あまり。カリスマ的ベーシスト、プロデューサー、作編曲家であるマーカス・ミラーの最新来日ステージが、昨日から始まっています。19日までブルーノート東京で公演し、20日には大阪・梅田のサンケイホールブリーゼでコンサートを開催、そして22日には東京・有明アリーナで行われる「Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN 2024」に登場します。五臓六腑にしみわたるようなベースの重低音、次世代メンバーとのスリリングなプレイの応酬は、ブルーノート東京公演のオープニング・ナンバーから冴えわたるばかりでした。

数えきれないほどの名メロディやアレンジを生み出した才人であるだけに、セットによって、どんな魅力的なナンバーがピックアップされるか予想不可能なところもマーカスの大きな魅力です。私が足を運んだ初日のファースト・セットは、どちらかというと、前半は近年の人気曲、中盤から後半にかけては定番中の定番(トリビュートも含む)を中心にしたセットリストであるような印象を受けました。7~8年ほど前にマーキス・ヒルの後任として参加したラッセル・ガンのトランペット・プレイは変わらず輝かしく、ビヨンセやベイビーフェイスとの共演歴も持つドナルド・ヘイズのアルト・サックスはまるでソウル・シンガーのように抑揚豊かです。キーボードのゼイヴィア・ゴードンはアンジー・ストーンのバンドにも在籍していた奏者で、オルガンのトーンを用いたブルース調のプレイが絶品。アンウォー・マーシャルはジャリール・ショウ、エド・チェリーなどストレート・アヘッド系のジャズマンとも数多く共演するドラマー。アディショナル・スネアを効果的に使いながら、マーカスのベースと呼吸をあわせて猛烈なグルーヴを生み出します。

マーカスのプレイは、「頂点に達して久しいにもかかわらず、まだ見ぬ新たな頂点を目指して突き進んでいる」感じです。右手親指の使い方も本当にニュアンスに富んでいて、スラップひとつとってもトーンの表情は驚くほど多彩。"エレクトリック・ベースの開祖"モンク・モンゴメリーばりに、弦に親指を軽く押し当てるようなつまびきで丸みのある音を出したり、コード(和音)をかき鳴らすときの響きも実に美しいのです。「Sublimity 'Bunny's Dream'」におけるサックスとベースの掛け合いの艶、「Love And Happiness」のバックで響く重厚なベース・ラインなどなど、低音好きには惚れ惚れさせられる瞬間の連続でした。

後半では、先日亡くなったサックス奏者のデイヴィッド・サンボーンにちなむ「Run For Cover」、「Maputo」なども演奏されました。二人が出会ったとき、マーカスはまだ十代だったそうですが、やがて彼がベース、作曲、プロデュースなどでサンボーン・サウンドになくてはならない存在となったのは歴史が示す通りです。デディケイションとはいえ、決して往年のレコードのように演奏するのではなく、ヘイズは彼自身の個性でサックスを吹き、マーカスも「Maputo」のイントロ部分に新たなフレーズ(リズム・パターン)を加えるなど、「今、ここにいるひとがプレイする意義」がひしひしと伝わってきたところには胸のすく思いがしました。22日まで連日のように行われる来日公演で、マーカスと彼のバンドの一体感はさらにさらに高まっていくことでしょう。充実の一途にある面々のライヴ・ステージを、ぜひご覧ください!
(原田 2024 9.18)

Photo by Makoto Ebi

―――――

9.20 fri. 大阪 梅田 サンケイホールブリーゼ
詳細はこちら

9.22 sun. Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN 2024 有明アリーナ
詳細はこちら

SET LIST

coming soon

INDEX