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JOYCE MORENO @COTTON CLUB

artist JOYCE

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原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO

サンバとジャズのしなやかな融合に時を忘れること間違いなし。大の親日家としても知られる"ブラジリアン・ミュージックの女王"ジョイス・モレーノの来日公演が、今年も始まりました。19日と20日にはブルーノート東京で、コロンビア出身のハープ奏者エドマール・カスタネーダをスペシャル・ゲストに迎えたライヴが行われますが、私は17日にコットンクラブで行われた第1部に足を運びました。そして、極上の音作りに浸るとともに、今後の公演への期待をさらに高めました。

共演メンバーはもちろん、公私ともにパートナーであるトゥチ・モレーノ(ドラムス)、ロドルフォ・ストロエテル(ベース)、エリオ・アルヴェス(ピアノ)。約15年間は続いている顔合わせだと思いますが、笑顔でアイコンタクトを交わしながらプレイされるフレーズの数々は実に新鮮な響きで迫ります。いつも、その曲に初めて臨むような気持ちで演奏しているのかもしれません。ジョイスはアコースティック・ギターをつまびきながらの歌唱ですが、その美しい指弾きにコードやアルペジオを駆使して絡むエリオのプレイも絶品でした。いくつもの和音を出すことのできるギターとピアノが決して干渉せず、互いに協調しながら、音楽そのものを豊かにふくらませていく感じといえばいいでしょうか。「Boiou」におけるトゥチの切れ味鋭いプレイ(ハイハットシャフトの部分まで楽器にしてしまうとは!)も実に鮮やかでしたし、1977年にニューヨークで録音されながらも40数年間リリースが見送られていたアルバム『Natureza』収録曲「Pega Leve」が、当時と変わらないギターの切れ味と共に、よりジャズ的な装いをまとって立ち上がったのも大きな聴きどころでした。

途中、ジョイスが抜けてトゥチ、ロドルフォ、エリオの"Sambaqui Jazz Trio"(この3人は15日、BLUE NOTE PLACEに登場しました)で演奏されたのはミルトン・ナシメント作の「Vera Cruz」。トゥチは決して一定のパターンを繰り返すことなく、エリオが紡ぎ出すフレーズに反応しながら演奏を進めていきます。アストル・ピアソラと共演したこともあるロドルフォは、このトリオの錨といったところでしょうか。エリオとトゥチが即興精神たっぷりにやりとりするなか、じっくり堅実に低音を送り込みます。ジョイスがステージに戻ると、今度はトリオが休み、彼女のソロ・コーナーが始まります。楽曲は、カエターノ・ヴェローゾ作「Desde Que O Samba É Samba」。まろやかな声と芳醇なアコースティック・ギターの響きが、場内を満たしてゆきます。

再び4人が揃った後半のステージは、「Chovendo Na Roseira」や「Desafinado」などアントニオ・カルロス・ジョビンの名曲を中心に繰り広げられました。幾多の伝説的歌手が歌ったナンバーを、今、日本にいながらにして、ジョイスの歌声で耳にできるのは、喜び以外の何物でもありません。ブルーノート東京での公演は19日と20日に開催されます。
(原田 2024 10.18)

Photo by Yuka Yamaji


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【LIVE INFORMATION】

JOYCE MORENO
2024 10.17 thu. コットンクラブ
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JOYCE MORENO
with special guest EDMAR CASTANEDA
2024 10.19 sat., 10.20 sun. ブルーノート東京
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