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EMMET COHEN TRIO

artist EMMET COHEN

REPORT

原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO

昨年、自身のプロジェクトで「ブルーノート東京」に初出演。全公演をソールド・アウトにした俊才ピアニスト、エメット・コーエンが1年ぶりに快演を響かせています。前回はほぼ同年代の気鋭メンバーとのステージでしたが、今回の共演者はルーベン・ロジャース(ベース)、ジョー・ファーンズワース(ドラムス)という、エメットが生まれた頃から活動を始めていた熟練たち。ジョシュア・レッドマンやチャールズ・ロイドのバンドに在籍経験のあるロジャース、エリック・アレキサンダーの盟友であり後期シダー・ウォルトン・トリオの一員でもあったファーンズワース(23年リリースのリーダー作『In What Direction Are You Headed?』にはカート・ローゼンウィンケル、イマニュエル・ウィルキンス、ジュリアス・ロドリゲスの参加でも話題を集めました)の聴きごたえのあるソロ・プレイもフィーチャーしながら繰り広げられた世界は、まさにアコースティック・ジャズ・ピアノ・トリオの輝きと深みにあふれたものでした。

オープニングは、トランペット奏者のリー・モーガンが書いたブルース・ナンバー「Speedball」。エメットは両手をフルに使いながら分厚いハーモニーを響かせるとともに、雄弁そのもののアドリブ・プレイで観客を引き込んでいきます。地を這うようなルーベンのウォーキング・ベース、ビリー・ヒギンズばりのオカズ(フィル・イン)を軽やかに入れるジョーも快演。この3人が一緒に演奏するのは今回のアジア・ツアーが初めてとのことですが、香港や韓国での公演を経て東京にやってきた彼らの息の合い方は、まさにレギュラー・トリオのそれです。

以降は、8月に国内発売されたばかりのニュー・アルバム『Vibe Provider』に入っている自作と、歴史的なスタンダード・ナンバーやジャズメン・オリジナルがバランスよく並びます。1930年代に作られたスタンダード・ナンバーの「Heart and Soul」(バリー・ハリスのプレイをヒントに、自らも演奏することにしたそうです)、"ジャズの創始者"を自称したジェリー・ロール・モートンのラテン調「The Crave」といった古典と、「Lion Song」など新しいレパートリーが違和感もなくひとつのステージで共存し、時にリリカルに、時にスウィンギー、時にクラシカルな要素も含みつつ奏でられていくさまは実に爽快です。

ラストに登場したのは、1950年代のマイルス・デイヴィス・クインテットやアート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズもプレイした、いわゆるリズム・チェンジ(循環コード)による楽曲「The Theme」。ただしエメットたちのアレンジは、シダー・ウォルトンの在籍した"タイムレス・オールスターズ"が施した解釈に基づいているように聴こえました。「ブルース」と「循環」----ジャズの根っ子といえる2つの形式を今、生演奏で楽しめる(非常に希少かもしれない)チャンスも、この日のライヴは与えてくれたのです。

配信番組「Live from Emmet's Place」も大好評のエメットですが、目の前で味わう音色の粒立ち、生き生きしたパフォーマンスは、やはり格別です。エメット、ルーベン、ジョーのトリオはブルーノート東京に明日まで登場、28日にはコットンクラブ公演が行われます。
(原田 2024 10.23)

Photo by Great The Kabukicho


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【LIVE INFORMATION】

EMMET COHEN TRIO
2024 10.22 tue., 10.23 wed., 10.24 thu. ブルーノート東京
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2024 10.28 mon. コットンクラブ
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