2024 10.28 mon., 10.29 tue., 10.30 wed.
NUBYA GARCIA
artist
原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO
レイクシア・ベンジャミン、イマニュエル・ウィルキンス、エメット・コーエン、アマーロ・フレイタスなどなど「今のジャズを面白くしている」気鋭が次々と登場している秋の「ブルーノート東京」ですが、昨日からはUK出身のテナー・サックス奏者、ヌバイア・ガルシアが圧倒的なプレイを繰り広げています。語り草となった昨年の公演からちょうど1年、最新意欲作『Odyssey』を携えて、まさしく待望の再出演です。
共演メンバーは前回のステージと同じく、ピアノ&キーボードのライル・バートン、アコースティック・ベースのマックス・ルサート、ドラムスのサム・ジョーンズ。演奏中、メンバー間からはごく自然に掛け声があがり、サックスを吹いていないときのヌバイアは体を揺らしながら笑顔で3人のプレイに耳を傾けます。不動の顔ぶれによる親密で濃密なパフォーマンスの数々は、ライヴ中の時の流れを一瞬のように感じさせてくれることでしょう。
ヌバイアはステージ上でセットリストを決めていくタイプですが、初日ファースト・ショウから『Odyssey』からのナンバーが次々とプレイされたのはいうまでもありません。アルバムでの「Dawn」にはエスペランサ・スポルディングの歌声が、「We Walk In Gold」ではジョージア・アン・マルドロウの歌声がフィーチャーされていましたが、この夜はインストゥルメンタル・ヴァージョンとして取り上げられました。「サックスの歌心」を満喫できるとともに、「曲の核」を提示するようなプレイぶりで、すでに『Odyssey』を聴いていた方は、「聴き比べの楽しさ」を味わうと共に「ヴォーカルの有無以上のサウンドの変化」にも感銘を受けることができたのではと思います。
エキゾティックな「We Walk In Gold」から、2000年リリースのアルバム『Source』(イギリス最高峰の音楽賞であるマーキュリー・プライズにノミネート)に入っていたラテン調の人気曲「La cumbia me está llamando」へ、いつの間にか移行している流れも絶品。この箇所に限らず、今回のライヴでは、曲間のポーズ(休止)をおかず、一種の組曲のように音楽を展開していく場面が大きく効果をあげていたように感じられます。ヌバイアの吹奏は雄弁そのもの、加えて私はそのフレージングからモダン・ジャズへの愛情もひしひしと感じました(彼女の師のひとりは、1980年代半ばにテレンス・ブランチャードらと共にアート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズに在籍したジャン・トゥーサンです)。2度行われたドラムスとのデュオ・パートは熱気と共に優雅さを放ち、深くリヴァーブを利かせたり、「ひとりサックス・アンサンブル」のような響きを出すなど、エフェクトの効果的な用い方にも耳を捉えられました。
公演は30日まで開催されますが、「全セット、異なる体験ができるでしょう」とヌバイアが語る通り、リピーターの方にも新たな喜びをもたらす演奏が連続することは間違いないと思います。今を駆ける人気テナー・サックス奏者、ヌバイア・ガルシア最新のパフォーマンスをお見逃しなく!
(原田 2024 10.29)
Photo by Makoto Ebi
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【LIVE INFORMATION】
NUBYA GARCIA
2024 10.28 mon., 10.29 tue., 10.30 wed. ブルーノート東京
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