2024 11.4 mon., 11.5 tue., 11.6 wed.
DIANNE REEVES
artist DIANNE REEVES
原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO
声の伸びと艶、泉のように湧き出るスキャットのフレーズ、観客を徹底的に乗せて笑顔にするエンタテインメント性、あふれ出る風格。「トップ・ヴォーカリストとは、こんなにすごいものなのか」と、私は改めて目を見張りました。
ダイアン・リーヴスの、なんと7年ぶりとなるブルーノート東京公演が始まりました。初日のファースト・セットから、場内は超満員。いかに彼女の歌が多くのひとに親しまれてきたか、いかに多くのファンが彼女の来日を待ち望んでいたかが伝わってきます。洒落た場内アナウンスによってテレオン・ガリー(ドラムス)、ルーベン・ロジャース(アコースティック&エレクトリック・ベース。つい2週間前にエメット・コーエン・トリオの一員として登場)、ホメロ・ルバンボ(アコースティック&エレクトリック・ギター)、ジョン・ビーズリー(ピアノ、キーボード)の順にメンバーが紹介され、そのままインストゥルメンタルの「Povo」が始まります。トランペット奏者のフレディ・ハバードが1970年代に発表したナンバーですが、ギターのリードで聴くのも新鮮です。
猛烈な拍手のなか、いよいよダイアンが登場し、歌い出したのは「What's New」。ヘレン・メリルやリンダ・ロンシュタットがスロー・テンポで歌ったスタンダード・ナンバーですが、ダイアンとバンド・メンバーたちはサンバ調の解釈で料理します。途中で登場したスキャットはまさに自由自在、"声で表現される即興のすごみ"を全身で浴びることができました。続いては、この夏に亡くなったギター奏者ラッセル・マローンに捧げて、彼が客演したアルバム『When You Know』から「Social Call」(ジジ・グライス作曲)を快唱。今をときめく気鋭ヴォーカリストであるジャズメイア・ホーンやサマラ・ジョイもレコーディングしている楽曲を、彼女たちからもリスペクトされているであろうダイアンの歌唱で今、聴くことができるのは、なんと贅沢なことでしょう。
パット・メセニー作「Minuano (Six Eight)」を5人一体となってドラマティックに解釈した後は、ホメロのアコースティック・ギターとのデュオ・コーナーで「Bridges」(ミルトン・ナシメント作)を披露。続く「Our Love Is Here to Stay」は途中までデュオでプレイされ、後半に各メンバーがひとりずつ演奏に参加していくというユニークな解釈が施されました。ラストを飾ったのは、どちらかというと通好みのスタンダード・ナンバー「Lazy Afternoon」。ダイアンはピアノ奏者リニー・ロスネスのアルバム『Art & Soul』に参加してこの曲を歌ったことがありますが、スロー・バラード仕立てだった同ヴァージョンに対し、この日のアレンジは実に躍動的なものでした。テレオンの"足カウベル"を始め全プレイヤーの妙技が炸裂し、後半、ダイアンは実にユーモラスなメンバー紹介を歌に盛り込んでいきます。全員が一丸となっての熱演に、観客がスタンディング・オヴェイションで応えたのはいうまでもありません。絶好調のパフォーマンスは6日まで続きます。
(原田 2024 11.5)
Photo by Takuo Sato
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