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HOLLY COLE

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原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO

カナダが世界に誇る歌姫、ホリー・コールの、約7年ぶりとなるブルーノート東京公演が昨日から始まりました。場内は老若男女のオーディエンスで超満員。いかに幅広いファン層が、彼女の来日ライヴを待ち望んでいたか伝わってきます。しかも今回は、ニュー・アルバム『ダーク・ムーン』を携えての開催です。おなじみのレパートリーから新作収録曲まで、多彩なレパートリーにホリー流の装いを施してくれました。

先にバンドスタンドにあがったのはアーロン・デイヴィス(ピアノ)、ジョージ・コラー(ベース)、ジョン・ジョンソン(サックス)の3名。アーロンは私の知る限り、30年以上もホリーとの共演を続けている歌伴の名手。ジョージはブルース・コバーンやピーター・ゲイブリエルとの共演もある奏者で、楽器を垂直に立てて、右手親指をほぼずっとネックにつけながらプレイします。曲によっては弓弾きを届けたり、ベースの胴体を叩いて打楽器的な効果をあげるなど、さまざまな形でサウンドにバラエティを加えていました。ジョンもまた、アレサ・フランクリンやロバータ・フラックのバックでも演奏したことがある売れっ子ミュージシャンで、この日はテナー・サックスとアルト・サックスを手がけました。また、アーロンとジョンは1980年代に、カナダの人気ラテン・ジャズ・バンド"マンテカ"で共に演奏したことがあります。

彼らがゆっくりしたテンポの、哀調を帯びた演奏を始めてしばらく経った頃、スタイリッシュなドレス姿のホリーが万雷の拍手を受けて登場します。オープニングは「Girl Talk」。この曲をまるでブルースのように深く歌いあげ、そこから「Something Cool」へ。ジューン・クリスティがオーケストラの伴奏で歌ったヴァージョンが高名ですが、ドラムスを含まない小編成でじっくり届けるホリーの解釈も実に美しいものです。100年近く前にアル・ジョルスンたちが書いた「Me and My Shadow」、フォーク・ミュージックの巨匠ダニー・オキーフの人気曲「Good Time Charlie's Got the Blues」(ジャズ・フュージョン・ファンにはアール・クルーのギター演奏で知られているかもしれません)など、"いいメロディと、印象的な歌詞を持つ曲"が時代を超えて、我々の前に差し出されます。『ダーク・ムーン』からは「Steppin' Out with My Baby」、「Moon River」、「No Moon at All」なども披露されましたが、ホリーが作品リリース時にしていた"より即興性を重視した"という発言は、今回のライヴ・ステージにもそのまま当てはまるといっていいでしょう。演奏家たちと絶妙なやりとりをしながら自然発生的に各曲をまとめていく、ホリーの魅力が100%味わえるひとときなのです。もちろん、彼女の名を不動のものにした「Calling You」も、ライヴ終盤でしっかりと歌われました。

文字通りのプレミアム・ステージは10日、11日にも開催されます。
(原田 2025 3.8)

Photo by Yuka Yamaji

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【LIVE INFORMATION】

HOLLY COLE
2025 3.7 fri., 3.8 sat., 3.10 mon., 3.11 tue. ブルーノート東京
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